宅地造成された敷地の既存木造建築物を解体し、鉄筋コンクリートと鉄骨の併用構造建築物に建て替える計画です。ランドスケープデザインされた海と山に囲まれる景勝地において、高品質である2階建て分棟形式建築物をスピーディーに提供することが建築条件でした。
地山を均すために造成された敷地の既存擁壁近くに建物が計画されていたため、既存擁壁をよけた位置に杭を配置。フラットスラブ基礎と杭を緊結することで硬質な人工地盤状の構造物をつくり、上部構造の荷重を伝達しやすい基礎計画としています。
上部構造の鉄筋コンクリート壁は平面計画にあわせるとともに空間を極力広くすることができるようにするため、偏平柱、偏平梁、フラットスラブ床を採用しています。
異なった平面計画である1階と2階の形状にあわせて鉄筋コンクリート壁を配置したため、一部の壁の平面位置が上下階でずれていました。フラットスラブと偏平梁で上下階の壁を接続、面状に分散して力を伝える架構としています。
屋根は寄棟形式とし、鉄筋コンクリートの壁で支持する計画です。比較的軽量な鉄骨造と剛性の高い鉄筋コンクリート造を屋根構造に採用し、安定しやすいようにしています。
力の伝達経路が複雑な架構計画であったため、有限要素解析で評価して力の伝達経路を確認しながら構造設計をしています。
建物近くの斜面から土砂が建物にあたることを想定し、土砂荷重に抵抗する壁、基礎、杭として計画しています。
敷地、既存建物、建築形態など特殊な建築構造条件が多くありました。各条件を整理し、架構の組み方を工夫した構造計画とすることで実現したプロジェクトです。
意匠設計:KAMIYA ARCHITECTS
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:200㎡、320㎡(分棟形式二棟)
階数:2F
構造:RC造/壁式RC造/鉄骨造
構造計画上の特徴
フラットスラブ基礎/既存障害物をよける杭配置/分散的に力を伝達する偏平梁とフラットスラブ/崖条例対応型RC造高耐力壁/任意形状の耐震性能を評価する立体解析/土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)