ヨーロッパ西端に位置するスペインは大航海時代に大西洋の海流に乗りアメリカ大陸に到達、文化交流および商業貿易などを経て世界的な繁栄を誇りました。
「La corriente de Kuroshio(黒潮の流れ)」を展示テーマとするスペインパビリオンは、日本とスペインのつながりを表す象徴として海と太陽を表現した建築計画です。
自然素材であり持続可能な木材を可能な限り建物に採用し、日本の法令に適合する耐震性能とすることはもとより、仮設建築物として解体することを前提とした構造計画とすることが求められました。
建築物の軽量化をはかり地盤への影響を最小化、大空間展示室とファサードは可能な限り木造部材で構成し、設計者と円滑なコミュニケーションをもってスピーディーに設計に取り組み、製作と施工を極力簡易化して施工可能なようにすること。
様々な条件はトレードオフの関係となることがありましたが、バランス感覚をもって構造設計に取り組みました。構造計画としては木造、CLT、鉄骨造を組み合わせたハイブリッド構造として、軽量化を図りながら構造性能を確保することでプロジェクトを実現しました。
併用構造であるため一貫計算構造解析ソフトウェアのみで評価するのが難しい架構です。建物全体を任意形状立体解析により評価するとともに、トラス梁、CLT耐力壁については部分解析モデルで構造性能を評価しました。
スペイン側意匠設計:Extudio, Enorme Studio / Smart & Green Design
日本側意匠設計:フランク・ラ・リヴィエレ・アーキテクツ/フロントオフィス
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:2960㎡
階数:3F
構造:木造/CLT/鉄骨造
構造計画上の特徴
軽量化と耐震性能向上に配慮したCLT耐力壁とCLT床/ファサードと大空間を構成する集成材柱と大断面集成材梁/ロングスパンを支持する集成材トラス/地盤への影響を最小化するフローティング基礎/工期短縮を実現する鉄骨ブレース造/鉄骨造とCLT耐力壁を接続する製作特注金物/任意立体解析による併用構造の評価/部分解析モデルによる応力評価