構造設計・監理として携わったプロジェクトの建築構造、構造計画を紹介しています。
中高一貫校のトレーニング施設の計画です。
教育施設で木を使うことが推奨されている昨今、海外からの来客や留学生も多い学園の施設として日本の代表的な工法である木造の建物、木質の空間を実現させたいと考え、「雨天、晴天に関わらず気兼ねなく運動できるよう簡単に屋根がかかった半外部の空間を作りたい」という学園の要望からスタートしたプロジェクトです。
大空間を木材で実現し、コスト合理化、学生のアクティビティに配慮する構造計画が要求されました。
⼀般的に、大スパン架構ではトラスや重ね梁などで屋根を支えます。本建物では束材・斜材を柱頭部に集中させて組むオリジナルの架構とし、中間の梁の上部が大きく空く構造計画にしました。
大空間に設けた梁は中断面集成材で大部分を構成、部材サイズをせい240mm、幅120mmとして、市中品を多く採用しました。
筑波山の双耳峰形状と茗溪のイニシャルMに近い斜材の組み方としながら力学的に釣り合うように構造計画し、木造在来工法でありながらも5m以上の開放された高さを確保、さらに東西への視線を通し、天窓からは自然光が降り注ぐ特別な空間を実現しています。
構造解析データを3DCADデータに変換し、ビジュアライズした構造パースを作成してクライアントに提示しました。新しい組み方をした柱上の集中斜材によって、梁上の空間が開放されるイメージを基本設計の段階で共有し、新しい架構計画を実現することができました。
建築主:学校法人茗溪学園
意匠設計:一級建築士事務所あとりえ
意匠協力:Atelier Aww
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:588㎡
階数:2F
構造:木造
構造計画上の特徴
集中斜材を利用した在来軸組工法/視線と光を通す小屋裏/ロングスパン木造/建方作業を考慮した鋼板挿入ボルト接合とホゾ接合/構造パースペクティブによるイメージ共有/任意形状立体解析
鉄筋コンクリートと木材で構成された2階建ての住宅です。
壁式鉄筋コンクリート造の強さと軽量な木質構造屋根により耐震性に配慮しながら温かみのある空間とした計画です。
意匠設計事務所の提案である木造の柔らかさとコンクリートの硬さを生かす構造体について有限要素解析で評価し、地震時の挙動をもとに鉄筋コンクリート壁を適切に配置し意匠計画と調和する構造計画が実現したプロジェクトです。
意匠設計:井上洋介建築研究所
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:199㎡
階数:2F
構造:壁式RC造/木造
住宅建築2024年4月号No.504
構造計画上の特徴
人の営みに配慮した併用構造/屋根軽量化による耐震性能向上/RC高耐力壁/異種構造を接合するディテール/任意形状立体解析
「”円”で囲まれたおはぎ空間をつくる」というテーマの店舗デザインプロジェクトです。
円盤に切り欠きを設けたモジュール化された部材を嵌合接合で組むという意匠設計からの提案に対して構造計画上のアドバイスをしました。一枚の円盤だけでは不安定構造となってしまうため互いに寄りかかることで安定性を確保しています。
店舗外周のオブジェ、ガラス机の支持材に円盤積層構造を採用しています。構造解析結果をビジュアライズし、動画イメージを共有したプロジェクトです。
意匠設計:KAMIYA ARCHITECTS / Youtube
構造協力:楠本玄英構造設計事務所
店舗床面積:150㎡
構造計画上の特徴
円盤積層構造/もたれかけ安定架構/任意形状立体解析
Photo Takumi Ota
「保有している蔵書をすべて本棚にいれ、その中に入れるようにしてアイデアを練る場所にしたい」という本棚の計画について構造耐力上のアドバイスをしました。
意匠設計が作成した3DCADデータを構造解析用のデータに変換し構造解析を行い、既存建物に作用する荷重を評価しています。
棚の強度については接合ビスが大きく影響します。一般的な使用方法とは異なるビスの使い方をするために、実用的な接合試験を行い耐力の評価を行いました。
依頼主: Creative Project Base
計画:早稲田大学小林研究室 / NoRA
構造協力:楠本玄英構造設計事務所
用途:本棚
構造計画上の特徴
実用的な接合部耐力試験/任意形状立体解析
1階を事務所とし、2~3階を共同住宅とした木造在来軸組工法の計画です。
エントランス部に斜め柱を設け安定化をはかることで、1階より大きな平面を有する2~3階の平面計画を実現しています。
建物中央に光を取り込む中庭を有します。耐力壁が光を極力遮らないように計画し、住まう人のアクティビティに配慮しています。
駐車場部分では耐力壁を配置できるスペースが少ない計画でした。釘本数を増やした高耐力壁を複数並列して並べる計画とすることで、駐車場の面積を極力大きく利用できるように配慮しています。
構造耐力上の分析手法としては三次元立体解析による応力解析を採用しました。耐力壁と床の硬さを評価するために有限要素である板要素を採用し、構造耐力上問題ないことを確認しています。
意匠設計:ツズキオフィス
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:384㎡
階数:3F
構造:木造
構造計画上の特徴
高耐力壁による構造部材省スペース化/高層部を広げる斜め柱/光と視線を通す耐力壁配置/任意形状立体解析
Other Year Works