Works 2024
構造設計・監理として携わったプロジェクトの建築構造、構造計画を紹介しています。
写真 Rigid walls & Wooden frame【まち化する福祉施設 れんがの家】
Rigid walls & Wooden frame【まち化する福祉施設 れんがの家】
日本財団みらいの福祉建築プロジェクト2021選定プロジェクトです。
敷地内にある納屋や基礎跡を資源として改修しホースガーデン、アトリエ、納屋兼ショップ、野外ダイニングとして使用する建築計画です。
福祉用途とは異なる活動を敷地内で行うことで、地域に開かれた社会的資源として考えられています。
中心となるレンガの家は既存棟を一部減築した上でレンガの外観を残しながら増築し、その2棟を大きな屋根とレンガの縁側という中間領域でつないでいます。
この建築計画に対してRC造と木造を併用する構造としました。
1階では既存外壁レンガをRC造の耐力壁と臥梁で包むようにして地震の揺れに対して外壁レンガを補強するようにしています。積雪量を軽減することができる勾配屋根とするとともに2階を木造とすることで軽量化。重量を軽減することで生じる地震力を小さくして耐震性能を向上させています。
屋根の登り梁は隙間をあけて二丁並べ、隙間に中間材を設けています。二丁の登り梁は積雪重量に抵抗し、隙間に設けた中間部材はレベルを少し高くして構造用合板と接続しています。下から見上げると二丁の梁が中間部材の幅だけ離れて見え、幾何学的に強調されたデザインとして意匠と構造が調和するように計画しています。
木造の筋交い、RC造の壁が耐震要素として機能する計画とし、各耐震要素の強さや硬さのバランスを評価するために有限要素解析を実施して耐震性能を評価しています。
計画地周辺で親しまれているレンガ壁を残しながら温かみのある木造空間を実現するために、現代技術と工夫したディテールを取り入れた建築物です。
意匠設計:トコト一級建築士事務所、KSA
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:約330㎡
階数:2F
構造:壁式RC造/木造
写真:©佐々木育弥
構造計画上の特徴
地域の象徴と温かい空間を実現する併用構造/分棟を包む木造大屋根/積雪量を低減する勾配屋根/既存外壁レンガを補強するRC高耐力壁と臥梁/寒冷地の仕上げと照明設備に調和する改良型三丁並列梁/温かみのある木造架構空間/一貫した構造設計思想とする複数棟同時検討/任意形状の耐震性能を評価する有限要素立体解析
斜面に住む【傾斜地を人の営みに調和させるスキップフロア形式住宅】
平面的に細長く、傾斜を有する敷地に計画された木造建築物です。
地盤レベルの高低差に対応するため高基礎形式としながら基礎に段差を設け、建物に作用する土圧を鉄筋コンクリート基礎で抵抗できるようにしています。
建物中央付近に階段を設け、高さ方向の動線にあわせて床のレベルを設定する建築計画です。各レベルの床が相互に力を伝えることがきるようにするとともに耐力壁をバランスよく配置する構造計画としています。
床レベル差が大きいこと、平面的に細長いことから建物をゾーニングし、各ゾーンで建物水平耐力を確保するように耐力壁を設け架構の安定化をはかっています。3次元モデルで形状の確認して、建物の挙動を確認しています。
意匠設計:森田信太郎建築設計事務所
構造協力:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:73㎡
階数:2F
構造:木造/RC造高基礎
写真:©中山保寛(中山保寛写真事務所)
構造計画上の特徴
縦動線にあわせたスキップフロア在来軸組工法/地盤レベルの高低差に対応し土圧を受ける高基礎/ 任意形状立体解析/ゾーニングによる耐震性能評価
国立公園のアトリエ・ヴィラ【INSPIRATION TRAIL】
宅地造成された敷地の既存木造建築物を解体し、鉄筋コンクリートと鉄骨の併用構造建築物に建て替える計画です。ランドスケープデザインされた海と山に囲まれる景勝地において、高品質である2階建て分棟形式建築物をスピーディーに提供することが建築条件でした。
地山を均すために造成された敷地の既存擁壁近くに建物が計画されていたため、既存擁壁をよけた位置に杭を配置。フラットスラブ基礎と杭を緊結することで硬質な人工地盤状の構造物をつくり、上部構造の荷重を伝達しやすい基礎計画としています。
上部構造の鉄筋コンクリート壁は平面計画にあわせるとともに空間を極力広くすることができるようにするため、偏平柱、偏平梁、フラットスラブ床を採用しています。
異なった平面計画である1階と2階の形状にあわせて鉄筋コンクリート壁を配置したため、一部の壁の平面位置が上下階でずれていました。フラットスラブと偏平梁で上下階の壁を接続、面状に分散して力を伝える架構としています。
屋根は寄棟形式とし、鉄筋コンクリートの壁で支持する計画です。比較的軽量な鉄骨造と剛性の高い鉄筋コンクリート造を屋根構造に採用し、安定しやすいようにしています。
力の伝達経路が複雑な架構計画であったため、有限要素解析で評価して力の伝達経路を確認しながら構造設計をしています。
建物近くの斜面から土砂が建物にあたることを想定し、土砂荷重に抵抗する壁、基礎、杭として計画しています。
敷地、既存建物、建築形態など特殊な建築構造条件が多くありました。各条件を整理し、架構の組み方を工夫した構造計画とすることで実現したプロジェクトです。
意匠設計:KAMIYA ARCHITECTS
構造設計:楠本玄英構造設計事務所
延床面積:200㎡、320㎡(分棟形式二棟)
階数:2F
構造:RC造/壁式RC造/鉄骨造
構造計画上の特徴
フラットスラブ基礎/既存障害物をよける杭配置/分散的に力を伝達する偏平梁とフラットスラブ/崖条例対応型RC造高耐力壁/任意形状の耐震性能を評価する立体解析
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